WaveSpectraでイヤホンの周波数特性を簡単に測定する
機械科の闇に飲まれていたかと思いきや意外と暇なのにブログ更新をサボっていたXFA-27です,お久しぶり.今回は一部Twitterで要望のあったイヤホンの周波数特性(F特)測定法を雑にまとめていきます.
ソフトウェア編
別のソフトだと位相が測れたり細かい比較機能があったりして便利らしいですが,取り敢えずシンプルなWaveGene+WaveSpectraを使います.
はじめに,efu氏のサイトからWaveSpectra(WS)とWaveGene(WG)をダウンロードして,解凍しておきます.ショートカット作ってデスクトップとかに置いとくと便利だと思います.大雑把に言うとWSはPC上で動作するオーディオ帯域のスペクトラムアナライザ,WGはファンクションジェネレータみたいな感じです.
スイープ音源の作成
まず,WGを開いて以下の通り設定します.今回は16bit/44.1kHzで20~40000Hzのサイン波スイープにしてあります.44.1kHzだと40kHzは入らないですが,前に24bit/96kHzでやってた時の名残なので気にしないで良いです.そもそも使うマイクの性能的に20kHz以上はまともに測れないので結局無意味
設定したら左から5個目のアイコンをクリックしてWAVファイルとして保存します.これをDAPに転送しておきます.PCにUSB-DACやオーディオインターフェイスを繋いで再生する場合は適当にミュージックフォルダにでも入れておいて下さい.WSの作業はこれで終わりです.
WaveSpectraの設定
次にWSを開いて以下の通り設定します.画像貼ってない項目はデフォルトのままです.
ハードウェア編
PCにマイクを繋いで,そこにチューブでイヤホンのカナル部を固定します.マイクは秋月で4個100円のECM(エレクトレットコンデンサーマイクロホン)
コンデンサ・マイク エレクトレットコンデンサーマイク(ECM) C9767 (4個入): パーツ一般 秋月電子通商-電子部品・ネット通販
C9767を使いました.安いECMの中では測定可能周波数が広めで,データシートによると50Hz~16kHzまで測れるらしいです.これに2本リード線をはんだ付けして,反対側にプラグを付けます.
今回は4極タイプのUSBマイクアダプタを使ったので,3.5mm4極のプラグを付けました.間にピンヘッダ/ピンソケットや適当なコネクタを挟んでおくとマイクを簡単に交換できて便利です.
配線ができたらイヤホンと繋げるための収縮チューブを取り付けます.φ8mmぐらいの硬めの収縮チューブが良いと思います.マイクの直径が9.5mmぐらいあるのでラジオペンチで拡張してからはめて,ヒートガンで収縮させて固定します.(多少くびれちゃうけどイヤホンのカナル部より太ければ多分問題ない)
これで測定器具は完成なので,イヤホンのカナル部分をはめ込んでからヒートガンを当てて固定します.この際弱めのヒートガン(エンボスヒーターとか)を使わないとイヤホンが熱で死ぬので注意.押さえてる手が火傷しない範囲なら大丈夫だと思いますが一応自己責任でお願いします.写真のようにミニバイスとかがあると安定して測定できます.
測定編
先ほど用意したマイクを付けたイヤホンをDAPやUSB-DACに繋いだら,WSの測定開始ボタン(赤丸)をクリックしてからスイープ音源を再生します.そうすると波形のピークが赤い線で表示されて,スイープが進むと高域側に伸びていくはずです.
ピークが高域側の端までいったら測定終了ボタン(黒い四角)を押して左下のMain/Peakボタンでピーク波形のみの表示に切り替えます.特性はイヤホンによりますが,こんな感じになるはずです.
これがそのイヤホンの周波数特性になります.ただし,マイクや再生機器の周波数特性の影響を受けるので,これは真のイヤホン自体の特性ではないことに注意してください.あくまで自分の環境で測った特性どうしを比べてイヤホンの特性を把握するもので,これをネットに上がってる周波数特性と比べるのは無意味です.手持ちのイヤホンの中で特性の差を見たり,既製品の音に近い自作イヤホンを作ったりするのに使うのには便利だと思います.
比較編
測定した波形は左下のオーバーレイ1保存(S)ボタンから保存できて,これをその下のオーバーレイ2読込(L)ボタンから読み込めます.オーバーレイ1は赤色,オーバーレイ2は青色で表示されるので,この2つを同時に表示すれば2つのイヤホンの特性を比較できます.もちろん同じイヤホンの左右を並べれば左右差も見られるので,自作イヤホンがちゃんと作れたかの確認や,買ってきたイヤホンに不具合がないかの確認にも使えます.アリエクで不良品に当たったときにこのグラフを貼って左右差が酷いんですけどって言えばOpenDisputeで勝率が上がるかも?
これはqdc 3CHとUE 5Proの自作コピーの比較で,低域はほとんど同じ(同じドライバだから当たり前?)だけど高域は特性が違うことが分かりますね.高域ドライバが3CHはTWFK,5Proは2389なので3CHの方が上まで出ています.3CHの高域にピークが少ないのは赤フィルタのせいかな...
以上,イヤホンのお手軽F特測定法でした.多分もっとスマートなやり方がある(efu氏のサイトにも説明があるし)んですが,まあこれでそれっぽい特性が測れてるので参考になればと思います.
夏休みに入ったら自作イヤホンを沢山作る予定なのでお楽しみに!
(アリエクから3.5万円分ぐらいBAが届きます)